御在所岳 創立40周年記念登山に参加して


  
 


 天候に恵まれ、二日間山登りを愉しむことができた。

一日目の御在所岳、その表銀座とも言うべき中道は、相変わらず登山客で賑わっていた。

難所では、初心者も入り混じり、渋滞が発生しており、忍耐の修練場と化していた。

このコースは、御在所岳の顔であり、岩場が随処に現れ、奇岩が点在しており、老若男女を問わず、登山者を魅了する。

晴天の土曜・日曜日は、登山口付近の駐車場、路肩は乗用車で埋め尽くされる。

時折、出窓のように登山道から空中に突き出した岩石の上に立つと、壮大な自然が眼前に拡がる。

この空間で、人の居ない静寂な時を暫く有っていたいと思うのは、喧騒の中に生きているからだろう。

左手にリフトを追いながら、スキー場のゲレンデを駆け上ると、頂上に辿り着く。

頂上が広場のようになっていて、多くの人が昼食や休憩をとっていた。

細く傾斜のきつい岩場の登山道とは不似合な頂上であるが、寛ぐには最適である。

 頂上から少し離れた所に気になる建物があり、立ち寄ることにした。そこは、御岳大権現と記されている。

据え付けられた銅鑼を撞木で叩くと低音が拡散する。御岳大権現の意味も分からず拝礼をして、下山口へと向かった。


 下山ルートは、一ノ谷新道を選択した。このコースも岩場であるが、その様相は、中道とは随分異なる。

道幅が狭く、片側、或は両側が崖になっており、頻繁に木の根っこが露出している。木の根っこに足を取られたり、

滑ったりするので、下山には、極めて慎重さを要求されるルートであった。

成程、中級者以上と表示されていることが納得できる。

下山途中、ヘリコプターの音が激しさを増し、爆音となった。近くにいるはずと思い、木々の間からその姿を探すと、

辛うじてヘリコプターらしきものが縞模様となって視認できた。すると、登山道にヘルメットとザイルを装着した男性二人が

ヘリコプターの方向を見ながら立ち止まっている。その男性から話を聞くと、70歳の男性が滑落して、

腰を打って歩くことができない状態で、自分たちが警察に通報したということである。

私たちが今朝、中登山道口付近に駐車していたとき、消防のレスキュー隊が来たことと、朝から頻りにヘリコプターが

上空を飛んでいたことの原因がこの滑落事故であることを知った。滑落から6時間も救助に手古摺っていると話されたが、

滑落者は、余程救助が困難な谷に居るのだと思われた。話を聞き終え、下山を再開して、

少し進むと前方上空が開けており、ヘリコプターが立ち去るのを目撃した。やっと救助が完了したのだろう。

救助の際、ヘリコプターは、かなり低い位置でホバーリングしていたように思う。

登山口まで降り切ったところで、会のメンバーを待っていると、通報者の彼らが下山し、

暫らくしてレスキュー隊が下山して来た。

そして、警察官もやって来て、彼らに事情を聴いていた。何処から滑落したのか定かではないが、

多くの人が行き来する御在所岳の登山道で、事故が多発しないことの方がむしろ不思議なくらいである。

様々な事を思い巡らしていると、メンバーが到着したので、湯の山ロッジへと向かった。


 夜は、予定通り、創立40周年記念の宴会が催された。すきっ腹のビールは、身体に浸み込むのが速い。

料理の内容は期待以上、心身共に満腹で部屋へ戻った。

部屋では、ラグビーの試合に大盛り上がり。日本の勝ちっぷりは、実に天晴れであった。


 二日目は、鎌ヶ岳に登る。武平峠に繋がる駐車場付近に車を止めて出発した。

途中、花崗岩が砕けて滑り台の様な箇所もあり、適度に緊張感もあって、距離は短いが退屈しない山である。

頂上から御在所岳が良く見えるが、岩の山とは到底思えないほどゆったりとしている。

鎌ヶ岳の頂上は、岩場で狭く風がきつい。後続の登山者に場所を空けるため移動、下山した。

このルートも下山には神経を使う。滑りやすい箇所が多いからである。

とは言え、下りに要する時間は短く、早々と登山口に到着した。

その後、ホテルの日帰り入浴で寛いだ。ここの露天風呂はお奨めである。

 私は、この山岳会との縁は短く、愛着は薄いが、山行で経験した内容は些か濃いものであった。

個人的には、現職に就いて40年になる。40年は一つの歴史であることに違いない。

人として、どれだけ進化しただろうか。

もう成長することはないが、これからも進化し続けることが私にとって生きている証である。

                                                        感想文:三木一之