信越・妙高山


  
   

アスヒ岳友会1359回例会 妙高山 山行記録

令和2年10月16日 参加者:T会長(担当)、M氏、Y氏、K氏、M木

10月15日(木)交通機関:T会長自家用車

10月16日(金)宿泊:燕ハイランドロッジ 10月16日(金)

【歩行・休憩時間8時間30分】

6:20燕温泉駐車場出発 →6:30登山口(登山届)→7:10麻平 →

8:10北地獄谷麻平分岐 →9:00天狗堂 →10:40妙高山頂上⇔妙高山北峰

11:40妙高山頂上 →12:30八合目風穴 →13:40北地獄谷麻平分岐 →

(北地獄谷)→15:00登山口

                                                                                                                                                     

燕温泉の名を聞くと、瞬時に新聞に掲載されていたスキー場だよりを想起する。

関・燕の積雪量が他を凌駕していた。その燕温泉の先に聳えるのが妙高山。

その秋は、如何なるものか、果たして紅葉は、どの様な展開を見せてくれるのか、期待は膨らむ。

温泉街を過ぎ、登山届が設置されている場所に立つと、硫黄の匂いが漂う。

左手に、「野天風呂 黄金の湯」の看板があり、朝風呂を愉しむ人が降りて来た。

下山後の楽しみが一つ増えたと思いながら、登山口を出発する。

暫く、林道を進み、麻平の標識が鮮明に現れると、分岐を妙高山へと進む。黄葉した木々の合間から

ススキを束ねたような衣を纏った山が見え、快晴の下で処々に紅葉が映える。秋山ならではの容姿である。

北地獄谷麻平分岐の手前を渡渉すると、そこは、到底川とは思えない色彩の自然美が流れていた。

辺り一面硫黄の匂いが漂い、左右から赤茶けた岩石が張り出し、狭まった小さな滝の岩石の表面は白色で覆われ、

暫し滞留する水は、青白濁で、水底に張り付いた緑の藻が荘厳さを増している。

実に幻想的な光景を目の当たりにして、驚愕するとともに、改めて日本の自然の美とお山の奥の深さを感得した。

たった一コマにこれほどの多様性を持った人はいない。そんな人物になりたいものである。

その上流を右手に、登山道を登って行くと、やがて登山者が休憩場所としている天狗堂に辿り着いた。

京都の鞍馬山にある天狗像を想像していたのだが、小さなお地蔵さんが赤い布を纏っていた。

何か意味があるのだろうか。気になる御堂である。この先、視界が開けて、妙高山頂上にどんどん近づいて行く。

八合目に差し掛かると、「風穴(かざあな)」があり、小さな穴に手を差し入れると風を感じるらしいが、

何も感じなかった。それは、私だけではないようで、他の登山者も期待外れであった。

今日は、無風の日であったに違いない。真っ先に、映画「ローマの休日」を思ったのは、古い人間の証だろう。

その後、最後の見せ場「鎖場」を上る。鎖は付いているが、岩稜に足の踏み場が彫られており、

これが階段状になっているので、傾斜はあるが、サクット上った。ここまで来たら、眼下の風景が広がり、

滑りやすい足元に注意を払いながら、2454mの妙高山頂上に辿り着いた。

青空の下、火打山と焼山がその存在を顕示している。今回は、悪天候が予想されるため、

火打山への縦走は断念したが、晴れ渡った火打山を視認できたことは幸いである。

この頂上には、三角点はなく、2446mの妙高山北峰へと移動した。

頂上よりも北峰が登山客には人気があるようで、人の動きもゆったりとしている。

ここから目前の岩越しに見える火打山と焼山も興味深い。360度パノラマを愉しん後、頂上に戻って下山した。

北地獄谷麻平分岐からは、谷筋へと下る。右手に2段の細長い滝が目を引く。称明滝と光明滝である。

その姿は、遠ざかれども視界から消えることなく、山の風景の重要な一役を担っていた。

この登山道から見る山は、紅葉と黄葉と緑葉に彩られた衣を纏い、その隙間から白い岩肌が遠慮がちに

張り付いているのが特徴的であり、自然の妙味に心を奪われる。

登山口の手前で、あの「野天風呂 黄金の湯」を視察のため、立ち寄った。青白濁の岩風呂に興味津々。

翌朝、入浴。大量の湯の花が白濁の正体であり、天然の露天風呂が飛び切りの贅沢であった。

今、外国人が見出した日本の美に、忘れていた日本人が学び始めている。

この国には、古代より自然の恵みに培われた人の営みがある。人工的な都会の風景に身を置いている者にとって、

その当り前の営みが美しいと感じる。美は、尊くもあり、厳しくもある。

今回は、妙高山の日帰り山行となったが、大自然を愉しむには満ち足りた山行であった。

       


            『山日和紅葉の香り走らせて愉しき道をアスヒと友に

                                                                                                               記録:三木一之